内閣文庫の蔵書印あれこれ「江戸幕府を支えた知の巨人-林羅山の愛読した漢籍-」@国立公文書館(2014年3月3日)
「国立公文書館で蔵書印まつりだよ!」
ときいたので、のこのこ出かけてきました。
本来の企画意図とは違うわけですが、蔵書印で浅草文庫の前後の流れが辿れるステキな展示会ともなっていました。
公式サイト:展示会情報:国立公文書館「平成25年度 連続企画展 第6回 江戸幕府を支えた知の巨人-林羅山の愛読した漢籍-」http://www.archives.go.
(リンク先は会期終了後、変更予定です)
蔵書印あれこれ
国立公文書館で「江戸幕府を支えた知の巨人-林羅山の愛読した漢籍-」展見てきた。巻頭巻末を展示している資料が多く、蔵書印祭り。羅山の三種の蔵書印に、林氏蔵書、昌平坂学問所大学蔵書、浅草文庫、大学蔵書、日本政府図書、大日本帝国図書印… http://t.co/rFiW7e3OZA
— Toshiyasu Oba (@tsysoba) March 1, 2014
林羅山の蔵書印のうち、最も多く見られるのが「江雲渭樹」(こううんいじゅ)で、これを含めた林家三氏の蔵書印は静岡県立中央図書館の「葵文庫の概要/5和漢書の部/(1) 林家の旧蔵書」でも見られます。
国立公文書館の展示、駿河版の大蔵一覧集、群書治要も出てた。羅山旧蔵の本草綱目も。十三経注疏巻末には、羅山の三男、林鵞峰(春斎)の書き入れた識語(足利学校の古板唐本がどうのこうのとか)あったり。ただし、展示テーマに関係ない点についての解説は基本ないので、見落とし注意。
— Toshiyasu Oba (@tsysoba) March 1, 2014
国立公文書館の林羅山展の続き。羅山愛読の古文尚書にも、林鵞峰の跋文があり、羅山の孫(つまり自分の息子)梅洞が、直接羅山から口授されて超うらやましい(意訳)、みたいなことが書いてあって、孫溺愛の伝統は根深い、と思ったり。
— Toshiyasu Oba (@tsysoba) March 1, 2014
えー、ここで、林羅山(1583-1657)とはどんな人物かをおさらいしましょう。
・江戸時代前期の儒学者で、慶長10年将軍徳川家康につかえ、以後4代の将軍の侍講をつとめる。
・法令の制定、外交文書の起草、典礼の調査・整備などにもかかわる。
展示会では、たいへんな読書家かつ蔵書家であったことが説明されています。
ではなぜ林羅山の愛読した漢籍がなぜいま内閣文庫にあるかというと、
林家の蔵書が昌平黌(昌平坂学問所)にひきつがれた→昌平黌(昌平坂学問所)の蔵書が、大学に引き継がれ、書籍館に集められ、浅草文庫にうつり、……太政官文庫から内閣文庫に…あれ? 浅草文庫から太政官文庫に至るあたりとかわからない。。家の中で行方不明の『幕府のふみくら』にのってるだろうか。確認できたら追記しようと思います。ごめんなさい。
林羅山の愛読した漢籍
この企画展の企画意図は、公式サイトによると、
圧倒的な読書量によって形成された「知識」を用いて江戸幕府を支えた林羅山、その「知」の淵源を羅山の書き込みのある漢籍をもとにご紹介します。
とあります。
では、漢籍、ってなんじゃらほい、と図書館学の用語集を見たら、ざっくりした説明でびっくり。
「中国人が漢文で書いた書物」
(今まど子 編著. 図書館学基礎資料. 第11版. 樹村房, 2013.3. 138p)
としか書いていません。それってイギリス人が英語で書いた書物、とかフランス人がフランス語で書いた書物、ぐらいの説明にしかなってないんじゃ(…おや、誰か来たようだ)
…ですが、岩波書店の『日本古典籍書誌学事典』でも一行目は「漢籍は、中国人が漢字だけで書いた書物のことである。」でした。後段では「外形から見た漢籍は、原則として宋以後の製版による木版本」、ともありますが、第一義的には 「中国人が漢文で書いた書物」ということでよさそうです。
林羅山の活動時期からいって、漢籍版本は基本明版なんだよなあ、当たり前っちゃあ、当たり前なんだけど。駿河版もそうだけど、あまりに普通に並んでいるので、全然珍しくないように見えてしまう。恐るべし、内閣文庫。
— Toshiyasu Oba (@tsysoba) 2014, 3月 1
また、「駿河版」とは、 「徳川家康が駿府(静岡)に退隠後の元和初年(17世紀初め)に、僧 崇伝、林羅山に命じて銅活字で刊行したもの。『大蔵一覧集』『群書治要』の二書がある」(今まど子 編著. 図書館学基礎資料. 第11版. 樹村房, 2013.3. 138p)
古活字版も展示されていました。
国立公文書館の展示会、古活字本の特徴がわかりやすい資料(http://t.co/ZgE542VX3u)が出ていたりするので(書誌学的な解説は一切ないですが)、ご近所の大学で図書館学教えていらっしゃる先生方もこの機会にいらっしゃるとよいと思います。撮影可だし。
— stkysm (@shima_mossa) 2014, 3月 3
以上の記述内容は、ほぼキャプションでは説明されていません(だって本筋じゃないし)。林羅山による書き込みや業績など、本筋は会場でごらんください…といいたいところですが…3月15日(土)までの開催です。
図録:なし