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国文学研究資料館特設コーナー「蔵書印の愉しみ」(2014年7月2日)

第1四半期よさようなら、第2四半期よこんにちは。7月ですね。

7月2日は、ガッツにあふれる東京近郊の図書館関係者は、「第2回LRGフォーラム・菅谷明子×猪谷千香クロストーク」、明治大学和泉図書館での「図書の文化史×西夏文献学講演会」の2大イベントに行ったらしいが、自分にとって、この日こそが「今でしょ」、の立川詣だった。



国文学研究資料館展示室は土日祝日がお休みなので、これまで常設展示「和書のさまざま」も含めてなかなか行くきっかけがつかめなかったが、会期(平成26年6月13日(金)~7月10日(木))のうち、7月2日は休みが取れそう、となり、ついに訪問が叶ったのだった。

 

ガラスケース4つ分の「蔵書印の愉しみ」

国文学研究資料館展示室に入ってすぐ、常設展示「和書のさまざま」に行く手前側の一角が、特設コーナーになっている。

特設コーナー| 国文学研究資料館


上記ページの写真のとおり、ガラスケース4つ分の展示だが、場所柄か、容赦なく濃い展示となっている。つい「あの有名人の蔵書印」で客寄せを狙うなんて甘いことはしない。自分が知っていた名前は谷干城市島春城ぐらいだった…。

そういや、蔵書印/出版広告(@NIJL_collectors)さんがTwitterでこれまで紹介していらした蔵書印もそうだった。今回の展示では資料に捺された状態で眺めることができる。

見所も下記のツイートで紹介されている。

Twitter / NIJL_collectors: [「蔵書印の愉しみ」展・見所紹介①-1] ...

Twitter / NIJL_collectors: [「蔵書印の愉しみ」展・見所紹介①-2] ...

Twitter / NIJL_collectors: [「蔵書印の愉しみ」展・見所紹介①-3・止]...

Twitter / NIJL_collectors: [「蔵書印の愉しみ」展・見所紹介②] ...

Twitter / NIJL_collectors: [「蔵書印の愉しみ」展・見所紹介②-2] ...

Twitter / NIJL_collectors: [「蔵書印の愉しみ」展・見所紹介②-3余談] ...

Twitter / NIJL_collectors: [「蔵書印の愉しみ」展・見所紹介③] ...

Twitter / NIJL_collectors: [「蔵書印の愉しみ」展・見所紹介③-2]...

ほか、「特設コーナー| 国文学研究資料館」でも概説されている。


面白かったのは、
・昭和50年に東京大学から管理換された資料群には、大正12年の関東大震災で全焼した東京帝国大学附属図書館復興のため、各界の識者・篤志家から寄せられた蔵書が多数含まれている
・印文の文字数は4文字が多い(これは個人蔵のものが多いから?)
・人気の四字熟語は「吾唯知足」
・所有者の名前や好きな言葉ではなく、本にまつわる体験を印文にしたものがある
「明治三十年八月由熊本帰誤落行李於海此本為所浸湿者」
(海に行李ごと落として濡れてしまった>見返しに黒カビがでていた…)
「昭和二十年四月十三日夜壕中二於テ戦災ヲ免レタル図書 茂」
とか。


蔵書印とは

ここから後は備忘のためのメモ。

蔵書印は、書物の所蔵を明らかにするために蔵書に捺した印影のことである*1

蔵書印がなぜ大事かというと、

蔵書印が捺されている書物の来歴を知ることができると同時に、その書籍の価値をおおよそ判断することもできます。また、蔵書印を手掛かりに当該の書籍に関係した人物や機関の蔵書の概要を知ることも可能

(国立国会図書館 蔵書印の世界. はじめに http://www.ndl.go.jp/zoshoin/zousyo/zousyoin.html)

だから。

図書館の目録では、印記は注記に入れられているが*2、どんな人たちがそこに注目するのか、というと、日本文学研究、なかでも書誌学・文献学と呼ばれる研究領域の人たちである。この人たちにとって、蔵書印は重要な考証材料となる*3。そう、蔵書印も研究資源なのだ。
そこで、国文学研究資料館では、目録作成における印記の採録だけでなく、印文情報と印影などをも蓄積した「NIJL 蔵書印データベース」を構築している。


※2012年3月末、国文学研究資料館webサイト「電子資料館」より一般公開を開始した蔵書印データベースは、その1年後となる2013年4月、nihuINT(人間文化研究機構 研究資源共通化統合検索システム)に新規参加しており*4国立国会図書館サーチ(NDL Search)からも横断検索対象となっている*5

 

”書脈”を浮かび上がらせる

このDBで重要だと思うのは、「国文研ニューズ」(No.31, 2013.5)に挙げられていた下記の点である。

もとより、印影を蓄積することの目的の1つは、散逸したコレクションをバーチャルに再編し、印主の学問的背景や知的興味等を浮かび上がらせること、そして、典籍の流通・来歴・出所・伝来を明らかにするツールとしての活用にある。共時的通時的に書物をつなぐ役割として蔵書印を眺めるとき、書物を介した情報網(ネットワーク)、書物を結節点(ノード)とする知的連鎖が浮かび上がってこよう。それを仮に”書脈”と呼ぶならば、書脈を可視化する蔵書印の可能性は無限に拡がっている

(青田寿美.「蔵書印データベース」にできること―つながるデータ、可視化する書脈. 国文研ニューズNo.31, 2013.5 より抜粋。太字はstkysmによる)

 

資料は流転する。


今年は、台東区立中央図書館での浅草文庫の展示(講演会「東京国立博物館の蔵書の流れと浅草文庫」於:台東区立中央図書館 (2014年1月25日) - stkysm's blog)に関連して、東京国立博物館で所蔵する「帝室本」の蔵書印の図(佐々木利和「博物館書目誌稿ー帝室本之部 博物書篇」)や、国立公文書館にある内閣文庫本に捺された蔵書印などを見る機会が続いていて、機関単位でのコレクションの分割と流れについて考えることが多い。
いままでも何気なく見ていたのだろうけれど、今年に入って意識的に見るようになったのは、個々の資料の内容だけでない、所有者の歴史を資料のかたまりで見る、ということの面白さがわかってきたからではないかと思う。

この流れを「書脈」と名付けるのはなるほど、しっくりくるなあと思った。

 


※さいごになりましたが、蔵書印/出版広告(@NIJL_collectors)さん、パン屋さんのマドレーヌ5個入1袋きりの手土産では到底追いつかないご歓待、ありがとうございました。展示室の向こうから後光を背負って横断幕(A3)を持った見知らぬ人にロックオンされた時の「狩られる…!」感は瞬時にMAXに到達でした(<おい)

 

入場料:無料

出品目録:あり(PDF)

http://www.nijl.ac.jp/pages/event/exhibition/images/140625mokuroku.pdf

鑑賞所要時間:30分 (常設展示は約40分)

 

 

*1:国立国会図書館 蔵書印の世界. はじめに http://www.ndl.go.jp/zoshoin/zousyo/zousyoin.html

*2:例(正岡子規の自筆本): 銀世界 第1-5 - 国立国会図書館サーチ http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001275707-00

*3:青田寿美.   蔵書印データベース.  研究資源共有化システムニューズレター no.7, 2013.11 http://www.nihu.jp/sougou/kyoyuka/pdf/newsletter/07.pdf

*4:同上

*5:国立国会図書館サーチについてhttp://iss.ndl.go.jp/information/outline/